車中泊の電装で最も危険なのは配線|sq数とヒューズ選定の基礎
電装DIYで機器の選定を間違えても、たいていは「動かない」で済みます。しかし配線とヒューズを間違えると<strong>車両火災</strong>になります。ここだけは妥協しないでください。
なぜ12Vは危険なのか
家庭用の100Vと違い、車の12Vは同じ電力を流すのに約8倍の電流が必要です。
電力(W)= 電圧(V)× 電流(A)なので、1000Wを取り出すとき:
- 100V なら 10A
- 12V なら 約83A(インバーター効率を含めると約98A)
100Aという電流は、家庭用の分電盤の主幹ブレーカー(40A程度)を大きく超える値です。この電流を細い配線で流すと、配線自体が発熱して被覆が溶け、最終的に発火します。
この電流から車を守る第一の砦が、電流に見合った太さの配線です。
配線サイズ(sq)の目安
「手元にあるコードでとりあえず」が、この分野でいちばん危ない発想です。配線はsq(スケア)と呼ばれる断面積で選びます。流したい電流との対応表はこうです。
| 電流 | 配線サイズ | 用途の例 |
|---|---|---|
| 〜20A | 2sq | LED照明・USB充電 |
| 〜35A | 5.5sq | 走行充電器(20〜30A)・小型インバーター |
| 〜60A | 8sq | 走行充電器(50A)・1000Wインバーター |
| 〜90A | 14sq | 1000Wインバーター(12V) |
| 〜130A | 22sq | 1500Wインバーター(12V) |
| 130A〜 | 38sq以上 | 2000W級 |
この表で注目すべきはインバーターの行です。1000Wクラスですでに90A近く──家庭の分電盤の主幹を超える電流が、自分の敷いた配線を流れることになります。
これは目安です。配線が長いほど電圧降下が大きくなるため、5m を超えるようなら一段太くしてください。また束ねて配線すると放熱しにくくなるので、余裕を持たせます。
電力収支シミュレーターでは、選んだ家電から必要な配線サイズとヒューズ容量まで自動計算します。
太さが決まったら、次はその配線を守る保険──ヒューズの出番です。
ヒューズは「バッテリーの直近」に付ける
ヒューズの役割は機器を守ることではなく、配線が発火する前に電流を遮断することです。だから守るべきは配線であり、設置位置は電源(バッテリー)から出てすぐが鉄則です。
機器のそばに付けても、バッテリーから機器までの配線がショートしたら意味がありません。バッテリーのプラス端子から15〜30cm以内に入れてください。
- 容量は想定最大電流の1.25倍程度を目安に、配線の許容電流を超えない値を選ぶ
- 大電流にはブレードヒューズではなくANLヒューズ・MEGAヒューズを使う
- 「ヒューズが飛ぶから容量を上げる」は最も危険な対処。原因を必ず調べる
ありがちな失敗:ヒューズが飛んだとき、原因を調べずにワンサイズ大きい容量へ交換してしまうことです。ヒューズは配線が発火する前に電流を断つ最後の砦なので、これは警報を止めて火種を放置するのと同じ対処になります。
ヒューズまで押さえれば骨格は完成です。ただし、事故はたいてい残りの細部から起きます。
配線とヒューズの基本はここまでです。ここから先は、DIYで実際に手を動かすときに検索される疑問に順に答えていきます。
家電ごとに12V側で何A流れるのか——電流の早見表

配線サイズの表を見ても、「自分の家電が何Aなのか」が分からなければ使えません。そこで、車中泊でよく使う家電を12V側の電流に換算して並べます。インバーターを通す家電は、変換効率85%を見込んで電流=W÷0.85÷12Vで計算しています。
| 家電 | 消費電力 | 12V側の電流 | 配線の目安 |
|---|---|---|---|
| LED照明+USB充電 | 15W(12V直結) | 約1.3A | 2sq |
| 車載冷蔵庫 | 45W(12V直結) | 約4A | 2sq |
| 電気毛布 | 55W(インバーター経由) | 約5.4A | 2sq |
| ノートPC | 60W(インバーター経由) | 約6A | 2sq |
| ポータブルクーラー | 350W(起動500W) | 約34A(起動約49A) | 8sq |
| 炊飯器 | 700W | 約69A | 8〜14sq |
| 電子レンジ | 1,000W(実効1,200W級も) | 約98〜118A | 14〜22sq |
この表で押さえてほしいのは、配線はインバーターの定格で決まるという点です。家電が小さくても、1000Wのインバーターを付けた時点で最大98Aが流れうる配線を敷く必要があります。「いまは電気毛布しか使わないから細くていい」は、翌年ケトルを買った瞬間に火種になります。機器側の容量選びはインバーター容量の決め方へ。
電流が分かれば太さは決まります。ところが事故は、太さを正しく選んだ人の配線からも起きます。手順の問題です。
電装DIYで「やってはいけない」配線ワースト5
車両火災の事例を分解すると、原因は毎回ほぼ同じ5つに行き着きます。どれも「つい、やりがち」な手抜きです。
- エレクトロタップ(配線の被覆に噛ませる分岐コネクタ)を大電流に使う:数A以下の分岐用の部品です。走行充電器やインバーターの配線に使うと、接触面が小さいため発熱して溶けます。大電流の分岐は圧着端子とバスバーで
- ペンチやハンマーで端子を潰す:見た目は付いていても接触抵抗が高く、大電流で熱を持ちます。専用の圧着工具を使い、引っ張って抜けないことを確認します
- ヒューズを機器側や途中に付ける:バッテリーからヒューズまでの区間は保護されません。プラス端子から15〜30cm以内が原則です
- 手持ちの細い線を流用する:家庭用の延長コードやスピーカーケーブルは、数十Aを流す設計ではありません。sq表示のある自動車用・電装用のケーブルを使います
- 車体アースを塗装の上から取る:塗装は絶縁体です。アース不良は「動かない」で済めばよいほうで、電流が細い別経路を探して流れ、思わぬ場所が発熱します
ありがちな失敗:ネットの配線図をそのまま真似て、線の太さだけ自分の手持ちに置き換えてしまうことです。図は「どこをつなぐか」しか示していません。太さ・ヒューズ・端子は自分の電流で計算し直すのが前提です。
配線を正しく組んでも、車内という環境がもうひとつ敵を連れてきます。水です。

結露やカビで電装は故障するのか
します。しかもいきなり壊れるのではなく、じわじわ接触不良が進むので原因に気づきにくい故障です。冬の車中泊は車内の湿度が一気に上がり、朝には窓も床も濡れます。
- 端子の腐食:バッテリー端子や圧着端子に結露が付くと緑青や白い粉が出ます。接触抵抗が上がり、充電が遅い・電圧が落ちるといった症状として現れます。端子にはグリスや絶縁カバーを
- 床下・壁内の配線:床の断熱材の内側は結露が溜まりやすい場所です。配線の接続部は床の上か、点検できる場所に出しておきます
- 機器の吸気口:インバーターや走行充電器は冷却ファンで車内の空気を吸います。湿った空気が基板に結露すると故障の原因になるため、床に直置きせず、通気のある高さに固定します
- カビ:電装そのものより、寝具や断熱材のカビが先に来ます。配線を隠した壁の内側にカビが出ると、点検のたびに開ける羽目になります
対策の基本は換気と点検口です。就寝中も換気口を少し開け、配線の接続部は「見られる・触れる」場所に置く。凝った隠し配線ほど、結露と相性が悪いと考えてください。
ここまでの内容を踏まえて、「では自分でどこまでやっていいのか」という線引きをしておきます。
自分でやっていい作業と、業者に任せるべき作業
電装DIYは資格が要る作業ではありません。しかし電流の大きさで、失敗したときの被害がまったく違います。当サイトでは次の線引きを勧めています。
| 作業 | 電流の目安 | DIYの現実性 |
|---|---|---|
| LED照明・USBポート・12Vソケット増設 | 〜10A | DIY向き。入門として最適 |
| リン酸鉄100Ah+走行充電器30A | 〜35A | DIY可。5.5〜8sq・ヒューズ40Aで収まり、情報も多い |
| 正弦波インバーター1000W | 〜100A | DIY可だが圧着工具と計算が必須。不安なら業者へ |
| 走行充電器50A+200Ah | 〜60A+充電系 | オルタネーター容量の判断が要る。業者施工を推奨 |
| インバーター1500W以上・メインバッテリー周りの加工 | 150A〜 | 業者施工を推奨。圧着品質が火災に直結 |
業者に頼む場合の費用は、部材別で工賃3〜8万円が相場です(総額シミュレーション)。配線図をもらえるか、ヒューズの位置と容量を説明してもらえるかを先に確認してください。説明できない業者は避けるのが無難です。
なお、自分で組む場合も「動いた=正しい」ではありません。通電後に配線と端子を手で触り、温かい箇所があれば即座に見直す。これが最も簡単で確実な点検です。
そのほか押さえておくこと
長くなりました。最後に、見出しを立てるほどではないものの、事故につながりやすい細部をまとめます。
- 圧着端子は専用工具で:ペンチで潰しただけの端子は接触抵抗で発熱します
- アース(マイナス)も同じ太さで:電流はプラス側とマイナス側を同じだけ流れます。プラス側だけ太くしても意味がありません。車体アースを使う場合は、塗装を剥がして金属面に確実に接触させること
- 配線色は慣習に従う:一般に赤=プラス(+)/黒=マイナス(−)/緑または緑黄=アース(接地)。自分だけが分かる配色にすると、後日の点検や第三者による修理のときに事故のもとになります
- 車体を貫通する箇所はグロメットを使う:鉄板のエッジで被覆が切れてショートする事故が多いです
- リン酸鉄バッテリーは大電流を出せる:鉛と違ってショート時の電流が桁違いに大きく、事故になったときの被害も大きくなります
よくある質問
サブバッテリーの配線は何sqが必要ですか?
流す電流で決まります。走行充電器30Aなら5.5〜8sq、50Aなら8〜14sq、1000Wインバーター(約98A)なら14〜22sqが目安です。配線が5mを超える場合は一段太くし、ヒューズは配線の許容電流を超えない値にします。
ヒューズはどこに付けますか?
バッテリーのプラス端子から15〜30cm以内です。ヒューズの役割は配線が発火する前に電流を断つことなので、バッテリーからヒューズまでの区間は最短にします。容量は想定最大電流の1.25倍程度が目安です。
電装DIYで一番やってはいけないことは?
エレクトロタップを大電流の配線に使うことです。数A以下の分岐用部品なので、走行充電器やインバーターの配線では接触部が発熱して溶けます。次いで、ペンチでの端子圧着、ヒューズの位置違い、塗装の上からの車体アースが事故の定番です。
1000Wのインバーターは12Vで何A流れますか?
変換効率85%を見込むと約98Aです。家庭の分電盤の主幹ブレーカー(40A程度)を大きく超える電流なので、配線は14〜22sq、ヒューズは125A前後が目安になります。
車内の結露で電装は壊れますか?
端子の腐食による接触不良がじわじわ進む形で故障します。端子にグリスや絶縁カバーを付け、接続部は床下ではなく点検できる場所に置き、機器は通気のある高さに固定してください。就寝中の換気も電装を守ります。
サブバッテリーの配線を業者に頼むといくらですか?
部材別で工賃3〜8万円が相場です。1000Wインバーター以下の構成ならDIYも現実的ですが、50A以上の走行充電や1500W以上のインバーターは圧着品質が火災に直結するため業者施工を勧めます。配線図とヒューズの説明をもらえる業者を選んでください。