サブバッテリーは100Ahと200Ahどっち?1泊の消費量から決める容量選び
100Ahと200Ah、値段はほぼ倍違います。カタログを見比べても決め手が出てこないのは、容量の数字だけを見ているからです。実際には「一晩に何Wh使うか」を出した時点で、答えは機械的に決まります。3つの使い方で計算して、境界線がどこにあるかを見ていきましょう。
まず、一晩でどれだけ使うのか
容量選びで最初にやることは、カタログを閉じることです。代わりに開くのは電卓。自分の「一晩」を数字にした時点で、この議論はほぼ終わります。
よくある3つの過ごし方で、一晩の消費を計算してみます。
| 構成 | 1泊の消費 | 判定 |
|---|---|---|
| ミニマム:冷蔵庫24h+LED照明+スマホ2台 | 約1,200Wh | 100Ah(使用可能約1,090Wh)は冷蔵庫の間欠運転前提でぎりぎり1泊 |
| 冬の標準:上記+電気毛布8h | 約1,640Wh | 200Ah推奨。100Ahでは毛布を削る運用に |
| 調理あり:上記+電子レンジ計10分+ケトル | 約2,000Wh超 | 200Ah+ソーラーか走行充電で日中回復が前提 |
この表で見てほしい数字は、実はひとつだけです。冷蔵庫の約1,080Wh(45W×24h)。たった45Wの箱が、一日回るだけで100Ahの実質容量をほぼ食い尽くします。つまり冷蔵庫を積むなら、100Ahは「冷蔵庫専用機」。照明もスマホも、残りわずかな容量に間借りする形になります。
個別家電の消費は家電別電源ガイドに、自分の構成の合計はシミュレーターで出せます。
「なら200Ahにすれば安心だ」——そう思いますよね。ところがここで、カタログには載っていない問題が顔を出します。
200Ahを選ぶ前に:充電は追いつくか
200Ahは、貯められる量が倍になるぶん、満たす手間も倍になります。
30Aの走行充電だけで半分から満充電まで戻すには、約3.3時間の走行が必要です。買い出しと温泉の往復程度では、まるで追いつきません。移動距離が短い旅程にとって、200Ahは「大きいのに満タンにならないタンク」です。
ありがちな失敗:容量だけを200Ahに上げて、充電系を30Aのまま据え置くパターンです。2泊目の朝に残量表示を見て、タンクの大きさと蛇口の細さの関係に初めて気づくことになります。200Ah化するなら、走行充電の50A化(30A vs 50A)かソーラー併設(100W vs 200W)を必ずセットで。
そしてもうひとつ、数字の外側にあるコストが残っています。重さと、場所です。
大きくすると何を失うか(価格・重量・スペース)
価格が倍になるのは想定内だと思います。効いてくるのは、その下の2行です。
| 100Ah | 200Ah | |
|---|---|---|
| 実勢価格 | 約3〜6万円 | 約6〜10万円 |
| 重量 | 約11〜13kg | 約20〜26kg |
| 設置 | 座席下に収まる機種が多い | 荷室の専有場所が必要な場合あり |
20kg超というのは、腰を入れて持ち上げる重さです。座席下にはまず収まらないので、荷室の一角を「電気の住所」として明け渡すことになります。車内のレイアウトが決まっている人ほど、ここが響きます。
だからこそ実務では、こういう折衷案が定番になっています。並列対応の100Ahで始めて、足りなければ同型をもう1台。初期費用を抑えつつ、実際の消費データを見てから増やすかを決められます(増設の条件はリン酸鉄の選び方参照)。
基本の比較はここまでです。ここから先は、検索でよく聞かれる「もう一歩踏み込んだ疑問」に順に答えていきます。
100Ahと200Ah、家電別に「何時間」使えるのか
「200Ahでどのくらい動けるのか」——これは検索でも最も多い疑問のひとつです。答えは家電ごとに違うので、一覧にしました。計算の前提は当サイト共通で、使用可能量=容量×12.8V×85%(100Ah≒1,090Wh、200Ah≒2,180Wh)。インバーターを通す家電はさらに1割ほど目減りします。
| 家電(消費電力) | 100Ahでの持続 | 200Ahでの持続 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 車載冷蔵庫(45W・間欠運転) | 約24時間 | 約48時間 | 外気温が高いと短くなる |
| 電気毛布(強55W) | 約20時間 | 約40時間 | 「弱」なら倍近く伸びる |
| CPAP(40W・加湿なし) | 約27時間 | 約54時間 | 医療機器は余裕率1.5倍で見る |
| ノートPC(60W) | 約16時間 | 約32時間 | インバーター経由の目減り込み |
| こたつ(平均150W) | 約6.5時間 | 約13時間 | サーモ制御で実消費は定格より低い |
| スポットクーラー(250W) | 約4時間 | 約8時間 | 一晩連続は200Ahでぎりぎり |
| 電子レンジ(1,000W) | 約1時間 | 約2時間 | 実際は1回5分程度の間欠使用 |
見方のコツは、「一晩に使う家電の時間を足し算する」ことです。冷蔵庫24時間+電気毛布8時間+スマホで、100Ahはほぼ使い切ります。この足し算を自動でやるのが電力収支シミュレーターです。
ただし、この表には大前提があります。バッテリーがリン酸鉄リチウムであること。鉛バッテリーだと、数字が半分になります。
鉛バッテリーなら話が変わる——「200Ahの鉛」は実質100Ah
中古キャンピングカーや古い架装車では、鉛(ディープサイクル)のサブバッテリーがまだ現役です。同じ「200Ah」と書いてあっても、鉛とリン酸鉄では使える量が倍違います。
| 鉛(ディープサイクル) | リン酸鉄リチウム | |
|---|---|---|
| 安全に使える放電深度 | 約50%まで | 約85〜90% |
| 200Ah表示で実際に使える量 | 約100Ah分(≒1,200Wh) | 約170〜180Ah分(≒2,180Wh) |
| 深く放電したときの劣化 | 急激に進む | 緩やか(BMSが保護) |
| 重量(200Ah) | 約50〜60kg | 約20〜26kg |
つまり鉛で「100Ahか200Ahか」を悩むなら、リン酸鉄の100Ahにしたほうが、鉛の200Ahより使える量は多く、重さは半分以下です。この記事の計算がすべてリン酸鉄前提なのは、そういう理由です。詳しい選び方はリン酸鉄バッテリーの選び方にまとめています。
ここでよく出る、もうひとつの疑問があります。「今ある100Ahに、200Ahを足していいのか」です。
100Ahと200Ahを混ぜて並列にしていいのか
結論から言うと、容量の違うバッテリーの並列はおすすめしません。動くことは動きますが、長持ちしません。
- 内部抵抗が違うため、充放電の負担が偏る。小さいほう(または古いほう)が先に消耗し、全体の寿命を縮めます
- BMSの設定電流が合わない。100Ah用と200Ah用では保護のしきい値が違い、片方だけ遮断されて電圧差が生じることがあります
- 新旧混在はさらに悪い。同じ容量でも、使い込んだ1台と新品の並列は同じ問題を起こします
増設するなら同型・同時期購入の2台を並列が原則です。だから本文で「並列対応の100Ahで始めて、足りなければ同型をもう1台」と書きました。最初から「あとで足す」前提なら、並列対応を明記した機種を選んでおくと、増設のときに詰みません。
並列で足す以外に、もうひとつ別の「増やし方」があります。
「2系統」という選択肢——固定バッテリー+ポータブル電源

容量を200Ahに上げる代わりに、100Ahの固定バッテリーに、ポータブル電源を足すという組み方です。使い込んでいる人ほどこの形に落ち着きます。
- 固定側(100Ah):冷蔵庫・照明など車に固定された常時負荷を担当
- ポータブル電源:電子レンジなどの瞬間大出力と、テント・災害時の持ち出しを担当
- 走行中はサブバッテリー系からポータブル電源を充電し、2つが同時に回復する
200Ahの固定1本より総額は上がりますが、「車から離れても電気が使える」という固定式にはない価値がつきます。配線の考え方と向いている人はサブバッテリーとポータブル電源の併用構成で詳しく扱っています。
自作するか、業者に頼むか
容量が決まると、次は「誰が組むか」です。目安は電流の大きさで線が引けます。
| 構成 | DIYの現実性 | 理由 |
|---|---|---|
| 100Ah+走行充電30A | DIY情報が豊富 | 配線5.5sq・ヒューズ40Aで収まり、部材はすべて通販で揃う |
| 200Ah+走行充電50A | 業者施工を推奨 | 8〜14sqの太い配線、60A級ヒューズ、オルタネーター負荷の判断が要る |
| インバーター1500W以上の常用 | 業者施工を推奨 | 大電流配線の圧着品質が火災リスクに直結する |

つまり「100Ahで始める」は、DIYで始められるという意味でもあります。配線とヒューズの考え方は配線とヒューズの安全設計、部材込みの総額は総額シミュレーションで確認できます。
結局、100Ahと200Ahのどちらを選ぶか
長くなりました。ここまでの計算と周辺の疑問を、判断の順序に置き直すとこうなります。
- 一晩の消費が1,000Wh未満(照明・スマホ・電気毛布・小型冷蔵庫)なら100Ahで足ります。余った予算はソーラーか走行充電の増強に回すほうが体感が上がります。
- 1,000Whを超える(冷房・調理家電・連泊)なら200Ah。ただし同時に充電手段を増やさないと、2日目に空になって意味がありません。
- 迷ったら100Ah+充電強化。あとから並列で足す前提で組んでおけば、使い方が変わっても対応できます。
自分の家電で計算するなら電力収支シミュレーターが早いです。充電側を詰めるなら走行充電器は30Aと50Aどっち?へ進んでください。
よくある質問
200Ahのバッテリーでどのくらい動けますか?
リン酸鉄200Ahの使用可能量は約2,180Whです。車載冷蔵庫なら約48時間、電気毛布(強)なら約40時間、スポットクーラー(250W)なら約8時間が目安です。複数の家電を同時に使う場合はそれぞれの消費を足し算してください。
100Ahのバッテリーで何時間使えますか?
リン酸鉄100Ahの使用可能量は約1,090Whです。冷蔵庫(45W)単体なら約24時間、電気毛布(強55W)なら約20時間です。冷蔵庫と電気毛布を同時に使うと、一晩(8時間)でほぼ使い切ります。
サブバッテリーの容量の目安は?
一晩の消費が1,000Wh未満(照明・スマホ・電気毛布・小型冷蔵庫)なら100Ah、1,000Whを超える(冷房・調理家電・連泊)なら200Ahが目安です。迷う場合は並列対応の100Ahで始め、実際の消費を見てから同型を1台足す方法が失敗しにくいです。
100Ahと200Ah、連泊ならどちらですか?
2泊以上を電気だけで賄うなら200Ahが基準です。ただし走行やソーラーで日中に回復できる旅程なら、100Ah+充電強化のほうが総額を抑えられます。
キャンピングカーのサブバッテリーのおすすめは?
特定の機種より、リン酸鉄リチウムであること・BMS(保護回路)を内蔵していること・並列対応を明記していることの3条件で選ぶのが確実です。鉛バッテリーは同じ容量表示でも使える量が半分になるため、新規導入では避けるのが現実的です。
残量は何%まで使えますか?
リン酸鉄は85〜90%まで使っても劣化が緩やかです。鉛(ディープサイクル)は50%を超えて放電すると急激に劣化するため、表示容量の半分までと考えてください。