雨天・曇天が続くときのソーラー現実値|悪天候3日間を数字でシミュレーション

季節2026-08-07

ソーラーのカタログには晴天の数字しか書いてありません。しかし旅先の天気は選べず、梅雨や秋雨は平気で3日崩れます。「悪いときにどれだけ発電するか」を知っておくことが、ソーラー主体の電源設計の本当の土台です。

天候別の発電係数(実用値)

まず、天気がどれだけ発電を削るのかを係数で押さえます。ここの感覚がズレていると、この後どんなに丁寧に設計しても砂の上に家を建てることになります。

天候晴天比200Wパネルの1日回収
快晴100%約600Wh
薄曇り(太陽の輪郭が見える)約50%約300Wh
本曇り約20〜30%約120〜180Wh
約10%約60Wh
冬の晴天(低い太陽高度)約40〜60%約240〜360Wh
1日回収快晴600Wh薄曇り300Wh本曇り150Wh60Wh冬の晴天300Wh
天候別・200Wパネルの1日回収量

ポイントは本曇り以下では「発電ゼロではないが、冷蔵庫1台すら賄えない」水準に落ちること。MPPTコントローラーは低照度に強く、この状況でPWMとの差が最大化します(MPPTの選び方)。

よくある誤解:「曇りでも半分くらいは発電するだろう」という見積もり。半分で済むのは太陽の輪郭が見える薄曇りまでで、本曇りでは2〜3割、雨なら1割まで落ちます。

係数が頭に入ったところで、悪天候が3日続いたら残量がどう減っていくのかを実際に追ってみます。

悪天候3日間のシミュレーション

机上の係数を、旅の3日間に当てはめてみましょう。ごく標準的な構成で、天気だけが崩れていくシナリオです。

条件:消費1日800Wh(冷蔵庫+照明・スマホ・PC)/ソーラー200W/バッテリー200Ah(使用可能約2,180Wh)/天気は曇り→雨→曇り。

回収収支残量
1日目(曇)+180Wh−620Wh約1,560Wh
2日目(雨)+60Wh−740Wh約820Wh
3日目(曇)+180Wh−620Wh約200Wh=ほぼ空

200Ahという十分に見える容量でも、悪天候3日でちょうど尽きる──これがソーラー単独運用の現実です。100Ahなら2日目に終わっています。

では、この結末を避けるには何を足せばいいのか。手当ては3つあります。

破綻させない3つの手当て

幸い、どれも大掛かりな工事ではありません。効きの大きい順に並べます。

  1. 走行充電を持つ:雨でも1時間走れば約380Wh入ります。悪天候時の主力はソーラーでなく走行充電です(走行充電器の選び方
  2. 容量は「消費2日分」を下限に:上のシミュレーションの通り、悪天候の緩衝材として効くのは容量です(容量の決め方
  3. 悪天候時の節電モードを決めておく:冷蔵庫の設定を緩める・調理をガスに切替・PCは車の走行中に充電。天気予報で前日に切り替えるルール化が効きます

基本の手当てはここまでです。ここから先は、曇りや雨のソーラーについて検索でよく聞かれる疑問──「曇りでも充電できるのか」「100Wパネルだと」「影がかかると」「天候に左右されない手はあるか」──に順に答えます。

連泊全体の収支設計は連泊の電源設計へ。ポータブル電源へのソーラー充電の実際はこちらで扱っています。

曇りの日にソーラー充電はできるのか(仕組みから)

答えは「できる。ただし晴天の2〜3割」です。ソーラーパネルは太陽の「直射光」だけでなく、雲に散らされた「散乱光」でも発電します。曇りの日でも空が明るいのは散乱光があるからで、その分の電気は作られます。ゼロにはなりません。

ただし散乱光の強さは直射光よりずっと弱く、本文の係数の通り、本曇りでは2〜3割、雨では1割まで落ちます。「曇りでも発電する」と「曇りでも十分に充電できる」は別の話で、検索でよく混同されている点です。

状態発電の仕組み充電として成立するか
薄曇り(太陽の輪郭が見える)直射光+散乱光成立。晴天の半分程度は入る
本曇り散乱光のみスマホ・照明の補充程度。冷蔵庫は賄えない
弱い散乱光のみほぼ成立しない。撤収して走行充電へ
夜間なしゼロ。街灯や月明かりでは実用的な発電はしない

ここで効いてくるのが充電コントローラーの種類です。曇りの低い電圧でも最大電力点を追いかけるMPPTは、PWMより曇天時に2〜3割多く回収できます。晴天時の差は小さいのに、曇りで差が開く──ソーラー主体の設計でMPPTを推す理由はここにあります(MPPTの選び方)。

「曇りに強いパネル」を探す人もいますが、パネルの種類で散乱光への反応が劇的に変わることはなく、面積(定格W)とMPPTの有無のほうが効きます。では、よく使われる100Wパネルだと曇りでどこまで入るのでしょうか。

100Wパネルは曇りの日に何Wh入るのか

折りたたみソーラーパネルを屋外で展開
100Wの折りたたみパネル。曇天では1日100Wh前後、スマホと照明の補充が精いっぱい。

ポータブル電源とセットで最も多く使われる100W折りたたみパネルを、天候別に1日の回収量で並べます。本文の200Wの半分ですが、「何を賄えるか」に置き換えると実感が変わります。

天候100Wの1日回収賄えるもの
快晴(夏)約300〜400Whスマホ・照明・PC1日分+電気毛布の一部
快晴(冬)約120〜180Whスマホ・照明・PC1日分
薄曇り約150Whスマホ・照明
本曇り約60〜90Whスマホ数台分
約30Whスマホ1台分
1日回収快晴(夏)350Wh快晴(冬)150Wh薄曇り150Wh本曇り75Wh30Wh
天候別・100Wパネルの1日回収量

結論は「100Wパネルは曇りの日、スマホと照明を維持するための装備」です。冷蔵庫(1日約1,080Wh)を曇天のソーラーで賄う発想は、100Wでも200Wでも成立しません。

ポータブル電源に繋ぐ場合は、もうひとつ落とし穴があります。本体のソーラー入力の下限です。多くの機種は入力電圧が一定(12V前後)を下回ると充電を始めず、曇天の100Wパネルはこの下限ぎりぎりで動きます。充電が「入ったり止まったり」するのはそのためで、故障ではありません。2枚を直列にして電圧を上げると曇天でも安定して入りやすくなりますが、本体側の入力上限電圧を超えないかを確認してください。100Wと200Wの使い分けはソーラー100W vs 200Wで比較しています。

天候の次に発電を削るのが「影」です。これは曇りより厄介です。

日陰・部分的な影がかかると発電はどれだけ落ちるのか

「ソーラーパネルに日陰をかけた場合、発電量はどのくらいになるか」への答えは、直感に反します。パネルの1割に影がかかると、発電は1割ではなく5〜9割落ちることがあります。

理由はパネルの構造です。パネルの中のセルは直列に繋がっており、電流は最も弱いセルに引きずられます。1枚のセルが影で電流を流せなくなると、その列全体が止まる──ホースの一か所を踏むと全体の水が止まるのと同じです。バイパスダイオードが入っているパネルなら、影のかかった区画だけを切り離して残りは動きますが、それでも区画単位(通常3分割)で落ちます。

影の状態発電の目安(晴天比)備考
影なし100%
電柱・枝の細い影が横切る約30〜60%影が横切る列だけ止まる
パネルの1/3が建物の影約30〜60%バイパスダイオードで残り2/3が動く
パネルの半分が影ほぼ0〜30%FAQの「半分影ならほぼゼロ」の根拠
木陰(まだら)約10〜30%影が動くため出力が不安定

対策は設置のときに決まります。

曇りと影の違い:曇りは全面が均一に暗くなるので発電は「比例して」落ちますが、影は一部だけ暗くなるので「列ごと」落ちます。曇天で2〜3割出るのに、晴天の木陰で1割しか出ないのはこのためです。

ここまで読むと「天候にも影にも左右されない電源が欲しい」となるのが自然です。最後にその答えを出します。

キャンピングカーの屋根に固定されたソーラーパネル
屋根固定は「置くだけで毎日発電する」のが最大の利点。発電量は設置角度と影で大きく変わります。

天候に左右されない電源設計は可能か

可能です。ただし答えは「すごいソーラーパネル」ではなく、「ソーラーを主力にしない」という設計側の発想の転換です。本文の「3つの手当て」を、天候依存度の低い順に並べ直すとこうなります。

回収手段天候の影響1日の回収(目安)費用感
走行充電(DC-DC 30A)なし走行1時間で約380Wh約2〜4万円台+配線
外部AC電源(RVパーク等)なし実質無制限1泊2,000〜4,000円
ソーラー200W+MPPT大きい(晴天600Wh→雨60Wh)平均約350Wh約3〜6万円台
容量の上積み(100Ah→200Ah)緩衝材として効く悪天候2日分を吸収約3〜5万円の差

つまり「走行充電を主力、ソーラーを補助、容量2日分を緩衝材」の三層にすると、天候はほぼ設計から消えます。雨の3日間も、1日1時間の移動があれば本文のシミュレーションは赤字になりません。停泊型でまったく走らない旅程だけが、ソーラー依存から逃げられないケースで、その場合は外部電源を旅程に組むのが唯一の保険です。

この三層構成の費用は総額シミュレーション、固定バッテリーとポータブル電源のどちらで組むかはポータブルvs固定で比較しています。

長くなりました。最後に、悪天候時の判断基準を置き直します。

結局、雨と曇りをどう織り込むか

この記事の数字を、設計の順番にまとめます。

パネルの選び方はソーラーパネル解説、連泊全体の収支は連泊の電源設計、自分の構成の計算は電力収支シミュレーターへ進んでください。

よくある質問

曇りの日にソーラーパネルで充電できますか?

できます。雲に散らされた散乱光でも発電するため、薄曇りで晴天の約50%、本曇りで20〜30%、雨で約10%が目安です。ただし本曇り以下ではスマホと照明の補充程度で、冷蔵庫を賄える水準ではありません。

ソーラーパネルは曇りに強いですか?

パネルの種類で曇天時の性能が劇的に変わることはなく、面積(定格W)とMPPTコントローラーの有無のほうが効きます。MPPTは曇天の低い電圧でも最大電力点を追うため、PWMより2〜3割多く回収できます。

ソーラーパネルに日陰をかけた場合、発電量はどのくらいになりますか?

影の面積以上に落ちます。セルが直列に繋がっているため、1割の影で5〜9割落ちることがあり、半分が影ならほぼゼロです。曇りは全面が均一に暗くなるので比例して落ちますが、影は列ごと止まるのが違いです。

100Wのソーラーパネルは曇りで何Wh発電しますか?

本曇りで1日約60〜90Wh、薄曇りで約150Wh、雨で約30Whが目安です。晴天の夏なら300〜400Wh入りますが、冬の晴天は120〜180Whまで落ちます。曇天では本体のソーラー入力の下限電圧を下回り、充電が断続的になることもあります。

雨の日のソーラー発電の対策は?

対策はソーラー側ではなく回収手段の追加です。走行充電(30Aで1時間約380Wh)は天候に関係なく入り、雨の日の主力になります。容量は消費2日分を下限にし、天気予報で前日に節電モード(冷蔵庫の設定緩和・調理をガスへ)に切り替えるルールが効きます。

天候に左右されない電源設計はできますか?

「走行充電を主力、ソーラーを補助、容量2日分を緩衝材」の三層にすれば、1日1時間の移動がある旅程では天候がほぼ設計から消えます。まったく走らない停泊型だけは例外で、RVパーク等の外部電源を旅程に組むのが保険です。

雨の日はパネルを出しっぱなしで大丈夫ですか?

防水等級を満たす固定式パネルは問題ありません。折りたたみ式は端子部の防水が弱い製品が多く、雨天は撤収が基本です。わずかな発電量のために濡らす価値はありません。

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